日本で使用可能な5種類のトリプタン製剤があります。
スマトリプタン(イミグラン)は、錠剤のほかに、点鼻薬、注射薬と自己注射が可能な注射薬の4種類があります。
ゾルミトリプタン(ゾーミック)とリザトリプタン(マクサルト)は、錠剤の他に水無しでも内服できる口腔剤があります。エレトリプタン(レルパックス)とナラトリプタン(アマージ)は錠剤のみとなっています。
このようにトリプタン製剤は、国内で5種類10製剤が販売されています、トリプタン製剤といっても、各々が同じというわけではありません。効果が強いものや弱いもの、副作用が強いものや弱いものなど様々です。また口腔錠も、ゾーミックはオレンジ味で携帯が便利です、マクサルトはミント味です。当院では患者様のニーズにあわせ、5種類9製剤を準備しています(現時点でゾーミック錠剤のみ常備していません)。
ここでは、経口トリプタン製剤について各々の特徴を示します。尚、詳細は薬剤の添付文書を参照してください。
| 一般名 | スマトリプタン | エレトリプタン | ゾルミトリプタン | リザトリプタン | ナラトリプタン |
| 商品名 | イミグラン | レルパックス | ゾーミック | マクサルト | アマージ |
| 製品量 | 50mg | 20mg | 2.5mg | 10mg | 2.5mg |
| 海外製剤との比較(量) | 2分の1 | 2分の1 | 同じ | 同じ | 同じ |
| 剤型 | 錠剤 | 錠剤 | 錠剤/口腔錠 | 錠剤/口腔錠 | 錠剤 |
| 初回投与量 | 1錠 | 1錠 | 1錠 | 1錠 | 1錠 |
| 追加投与量 | 1錠 | 1錠 | 1錠 | 1錠 | 1錠 |
| 追加投与間隔 | 2時間以上 | 2時間以上 | 2時間以上 | 2時間以上 | 4時間以上 |
| 1回最大投与量 | 2錠 | 2錠 | 2錠 | 1錠 | 1錠 |
| 1日最大投与量 | 4錠 | 2錠 | 4錠 | 2錠 | 2錠 |
(頭痛診療ハンドブック 鈴木則宏教授編集 中外医学社を改変)
スマトリプタンは、国内で最初に発売されたトリプタン製剤で、第一世代のトリプタン製剤という印象があり、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタンの3製剤は第二世代、ナラトリプタンは第三世代とでもいうべき印象です。
この中で、スマトリプタンとエレトリプタンの2剤は、海外の半分の量で販売されています。日本国内の試験で、薬剤の量が決定され、海外量の半分量とされる薬剤があります。
一日に内服可能な量や追加投与までの時間が異なり、薬剤によって十分な注意が必要です。
| 一般名 | スマトリプタン | エレトリプタン | ゾルミトリプタン | リザトリプタン | ナラトリプタン |
| 商品名 | イミグラン | レルパックス | ゾーミック | マクサルト | アマージ |
| 製品量 | 50mg | 20mg | 2.5mg | 10mg | 2.5mg |
| 用法・用量 | 成人1回50mg、 1日200mg以内 50mgで効果 不十分の時、 次回より100mg 投与可 追加投与間隔 2時間以上 |
成人1回20mg、 1日40mg以内 20mgで効果 不十分の時、 次回より40mg 投与可 追加投与間隔 2時間以上 |
成人1回2.5mg、 1日10mg以内 2.5mgで効果 不十分の時、 次回より5mg 投与可 追加投与間隔 2時間以上 |
成人1回10mg、 1日20mg以内 追加投与間隔 2時間以上 |
成人1回2.5mg、 1日5mg以内 追加投与間隔 4時間以上 |
| 最高血中濃度 到達時間(時間) | 1.8 | 1 | 錠3.00 RM2.98 | 錠1.0 RPD1.3 | 2.68 |
| 血中半減期 (時間) | 2.2 | 3.2 | 錠2.40 RM2.90 | 錠1.6 RPD1.7 | 5.05 |
| 脂溶性 | × | ○ | ○ | ○ | × |
| 代謝酵素 | MAO-A | CYP3A4 | CYP1A2 MAO-A | MAO-A | CYP1A2など 複数のCYP 分子種 |
最高血中濃度到達時間が短いものは、短時間で効果が出ることが予想され、また血中半減期の長いものは、持続時間が長いことが予想されます。ナラトリプタンなどは血中半減期が他の4剤と比較して長く、追加投与する場合は4時間あける必要があります。
| 一般名 | スマトリプタン | エレトリプタン | ゾルミトリプタン | リザトリプタン | ナラトリプタン |
| 商品名 | イミグラン | レルパックス | ゾーミック | マクサルト | アマージ |
| 製品量 | 50mg | 20mg | 2.5mg | 10mg | 2.5mg |
| 2時間後 頭痛改善率(%) | 62.7 | 48.9 | 63.5 | 68.6 | 48.6 |
| 2時間後 頭痛消失率(%) | 28.7 | 16.4 | 29.1 | 40.1 | 22.4 |
| 24時間後の 継続頭痛消失率(%) | 19.8 | 10.6 | 19 | 25.3 | 15.9 |
| 2-24時間以内の 再発率(%) | 27.8 | 28.4 | 30.3 | 36.9 | 21.4 |
| 副作用(%) | 7.8 | 1.9 | 15.9 | 13.5 | 2.4 |
| 中枢神経領域の 副作用(%) | 3.7 | 2.6 | 9.9 | 9.4 | 1.9 |
| 胸部の副作用(%) | 1.9 | -0.3 | 2 | 1.5 | 0.4 |

これは、Ferrari MDらによる論文のデータを表とグラフとして示しました。各々の比較試験ではありませんので注意が必要です。各々のトリプタン製剤の傾向は理解できます。マクサルトやゾーミックは、比較的効果が高いのですが、その分、副作用も多いようです。イミグランは中間に位置します。レルパックスやアマージは、効果は若干劣るようですが、副作用は少ないようです。レルパックスは海外量の半分量であることがその理由と考えられます。アマージは、いわゆるジェントルトリプタンとしての意味合いが強いと考えられます。アマージは半減期が長いため、24時間以内の再発率は低いという傾向があります。
これは、各製品の添付文書から副作用を抜粋し表にしています。(一部内容を変更しています。)
| 一般名 | スマトリプタン | エレトリプタン | ゾルミトリプタン | リザトリプタン | ナラトリプタン |
| 商品名 | イミグラン | レルパックス | ゾーミック | マクサルト | アマージ |
| 製品量 | 50mg | 20mg | 2.5mg | 10mg | 2.5mg |
|
悪心・嘔吐 3.7%
痛み 2.6%
眠気 2.6%
倦怠感 1.8%
動悸 1.4%
めまい 1.3%
圧迫感 1.1%
|
めまい 4.1%
眠気 4.1%
嘔気3.3%
口内乾燥感 2.6%
疲労 2.5%
|
無力症 3.5%
絞扼感 3.5%
眠気 3.0%
めまい 2.6%
異常感覚 2.6%
|
眠気 7.7%
倦怠感 2.9%
めまい 2.2%
口渇 1.8%
脱力 1.5%
悪心 1.1%
感覚減退 1.1%
|
悪心 3.8%
嘔吐 2.3%
痛み 1.9%
眠気 1%未満
めまい 1%未満
倦怠感 1%未満
|
各々の薬剤からの添付文書から、副作用をみてみますと、頻度に差がありますが、眠気、脱力感、めまいなどの似通った副作用があります。
リザトリプタン(マクサルト)は、1錠10mgです。
片頭痛発作にとても有効な薬剤です。しかし、効果はあっても、眠くなる、めまい、だるいなどの副作用が出現することがあります。
患者様にリザトリプタン1錠10mgを投与しましたところ、効果があるけれども、副作用が強く、副作用の比較的弱いトリプタン製剤のレルパックスに変更しました。しかし、副作用は少ないのですが、効果の満足度は低いという結果でした。次にリザトリプタン半分量0.5錠(5mg)をお渡ししたところ、効果もあり、副作用もなく高い満足度が得られました。
患者様には、リザトリプタン1錠10mgを投与しましたところ、効果があるけれども、副作用が強くて、自分で半分にして飲む工夫をされていました。
このような経験から、リザトリプタン(マクサルト)1錠10mgで加療し、効果があるが、副作用は強い患者様には、リザトリプタン0.5錠5mgを試していただいています。リザトリプタン0.5錠5mgで効果があり、副作用もなければ、高価なトリプタン製剤が半額ですむという経済的なメリットも生まれています。但し、経済的な理由から、0.5錠を投与することは差し控えています。
次に、これまでの公表されているデータから、リザトリプタン5mg投与と10mg投与との比較を示します。
海外のデータでは、5mgと10mgでは、効果や再発率などに差がみられ、効果の面から、10mg投与の有意性が示されています。一方、日本でのデータでは、5mg投与と10mg投与とでの差はほとんどみられません。この二つの報告を単純比較するわけにはいきませんが、日本での5mg投与のデータは、海外での10mg投与のデータに類似します。日本人は欧米人に比較すると体格も小さく、体重当たりの投与量を考えると、欧米での10mg投与が、日本人では5mg投与に近似するのかもしれません。


スマトリプタン(イミグラン)は、最初に発売されたトリプタン製剤です。現在のトリプタン製剤の基本となっています。
スマトリプタン(イミグラン)は、錠剤のほかに、点鼻薬、注射薬と自己注射が可能な注射薬の4種類の製剤があり、患者様の症状や状態に応じていろいろな使用方法ができます。他のトリプタン製剤にはない注射薬と点鼻薬を備えている点が特徴です。
各々の特徴について表示します。
| 一般名 | スマトリプタン コハク酸塩錠 |
スマトリプタン 点鼻液 |
スマトリプタン コハク酸塩注射液 |
| 商品名 | イミグラン錠50 | イミグラン点鼻液20 | イミグランキット 皮下注3mg |
| 製品量 | 50mg | 20mg | 3mg(0.5ml) |
| 剤型 | 錠剤![]() |
点鼻液![]() |
注射製剤![]() |
| 初回投与量 | 1錠 | 1容器 | 1A |
| 追加投与量 | 1錠 | 1容器 | 1A |
| 追加投与間隔 | 2時間以上 | 2時間以上 | 1時間以上 |
| 1回最大投与量 | 2錠 | 1容器 | 1A |
| 1日最大投与量 | 4錠 | 2容器 | 2A |
| 最高血中濃度 到達時間(時間) |
1.8 | 1.3 | 0.18 |
| 血中半減期 (時間) |
2.2 | 1.87 | 1.71 |
| 投与後の 血漿中濃度 |
![]() |
![]() |
![]() |
| 頭痛改善率 (10分) |
|||
| 頭痛改善率 (15分) |
9 | ||
| 頭痛改善率 (20分) |
51.5 | ||
| 頭痛改善率 (30分) |
7.1 | 20 | 75.8 |
| 頭痛改善率 (60分) |
33.8 | 35 | 93.9 |
| 頭痛改善率 (90分) |
47 | ||
| 頭痛改善率 (120分) |
42 | 55 | |
| 頭痛改善率 (180分) |
65.2 | ||
| 頭痛改善率 (240分) |
71.4 |
イミグランの注射薬と自己注射が可能な注射薬は、投与後血漿中濃度もほぼ同様であり、ここでは病院で使用するイミグラン注射薬は省略しています。イミグランの注射薬は効果発現までの時間が最も短いことが特徴です。
注射薬の場合、10分程度で改善がみられ、投与後30分の頭痛改善率は、上の表の赤字で示すような歴然とした差がみられます。そして2008年に自己注射が可能なイミグラン皮下注キットが発売され、群発頭痛やこれまでの治療で十分な効果が得られなかった片頭痛などの患者様に対して、在宅で自己治療が可能となりました。
また、イミグラン点鼻液は、嘔気が強いため薬剤の内服加療ができない患者様に有効です。また、鼻腔粘膜から約15%が吸収されます。このため、内服薬と比較して早期に効果をあげることができます。
そして、もう一つの特徴として、各々の成分が同一のため、次のような使い方が可能です。
| イミグランの投与方法 | 投与間隔 |
| イミグラン錠50→イミグラン錠50またはイミグラン点鼻液20またはイミグラン注3 | 2時間以上あける |
| イミグラン点鼻液20→イミグラン錠50またはイミグラン点鼻液20またはイミグラン注3 | 2時間以上あける |
| イミグラン注3→イミグラン錠50またはイミグラン点鼻液20またはイミグラン注3 | 1時間以上あける |
このような使い方をされる場合は十分な説明と理解が必要です。また、イミグラン製剤と他のトリプタン製剤との投与間隔は24時間以上あけることが必要です。
片頭痛の予防薬について、もう少し詳しく説明します。
塩酸ロメリジンは、日本で開発され片頭痛に対して保険適応があり、副作用が少なく
使用しやすい薬剤です。当院では、片頭痛の予防薬として第一選択として使用しています。
エビデンスレベルはgrade Bです。
出典:脳と神経2009 p 1138、1111、今日の治療薬
バルプロ酸は、抗けいれん薬の一種です。欧米では片頭痛予防薬の第一選択として
使用されています。当院では、片頭痛の予防薬として抗けいれん剤を使用する場合は、
トピナを使用することが多く、バルプロ酸を使用することは多くありません。
エビデンスレベルはgrade Aです。
アミトリプチリンは、三環形抗うつ剤の一種です。欧米では片頭痛予防薬の第一選択として
使用されています。当院では、1)テラナスの効果がない場合、2)心因的な影響が考えられる場合
などに片頭痛の予防薬として、アミトリプチリンを使用しています。
エビデンスレベルはgrade Aです。
プロプラノロールは、βブロッカーの一種で、心疾患の薬剤です。欧米では片頭痛予防薬の
第一選択として使用されています。欠点として、トリプタン製剤のマクサルトとの併用が
禁忌となっています。当院では、片頭痛の治療にマクサルトを使用することが多く、誤って
マクサルトを併用することを避けるため、現在、予防薬としてあまり用いていません。
しかし、欧米ではマクサルトとの併用は使用禁忌にはなっておらず、マクサルトの使用量が
5mgと制限されています。
プロプラノロールは、妊婦の片頭痛予防に使用可能という最大の利点があります。
予防薬として使用する際には、トリプタン製剤の選択・使用に十分な注意を払い使用しています。
エビデンスレベルはgrade Aです。
トピラメートは、新しい抗けいれん剤です。すでに、欧米50ヶ国では片頭痛の予防薬として
使用されています。当院では、片頭痛の予防薬として塩酸ロメリジンを第一選択に使用していますが、
効果が十分でない場合、第二選択の一つとして、トピラメートを使用しています。
エビデンスレベルはgrade Bです。
ARBは降圧剤です。若年者の片頭痛では高血圧を合併していることはほとんどありません。
しかし、年齢が上がってくると、高血圧や脂質異常などを併発する場合があります。
当院では、片頭痛に高血圧を併発している場合、片頭痛予防薬と降圧剤が必要な場合、
ARBを使用しています。
エビデンスレベルはgrade Bです。
2011年より片頭痛に対してバルプロ酸が保険適応となりました。
用法・用量は下記の如くです。
通常1日量バルプロ酸として400mg-800mgを1日2-3回にわけて経口投与する。
尚、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1000mgを超えないこと。
さらに、2011年7月に日本頭痛学会よりバルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン(暫定版)が出されましたので紹介します。
アセトアミノフェノンは、小児や妊婦・授乳をされている女性の片頭痛の第一選択薬として使用されてきました。
しかし、成人ではその効果があまりなく、患者様はアセトアミノフェノンの使用はあまり好まれませんでした。
ここには一つの原因があります。日本での使用用量が、今まで少なかったことです。アメリカや韓国では、アセトアミノフェノンの用量は、1回1000mg、1日4000mgでした。佐世保は米軍基地があり、そこで従事している日本人に1回1000mgが実際に処方されているケースをみたことがあります。
日本でも2011年2月より、成人の鎮痛における用量が拡大され、1回1000mg、1日4000mgまで使用可能となりました。

これまで、成人で400mg程度を処方して効果がなかったのですが、増量により、片頭痛の鎮痛効果が十分に得られることが期待されます。
その他のアセトアミノフェノンの特徴を述べます。